先日、武蔵野赤十字病院の泉並木副院長の講演を聞いて、C型慢性肝炎・肝硬変の治療法(治療効果予測)に、このような画期的な研究方法(データマイニング)があるのかと感心してました。講演後に、クリニックの先生方の質問が相次いであったことからも、消化器科の一般診療医にもこの治療予測に対する認知度は広まっていないという印象を持ちました。
以下に、C型慢性肝炎・肝硬変の(インターフェロン療法)治療予測について、どのような診断手法なのかを引用しました。
~以下、記事引用~
肝炎治癒率を一目で
医療にもデータマイニング
大量情報解析し新知見
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0116hepatitis.html
(最新医療情報 MEDICAL NEWS 共同通信社)版権 共同通信社(一部改変)
の記事です。
▽効果を予測
武蔵野赤十字病院の泉並木・消化器外科部長らは、いくつかの円グラフを矢印でつないだ図を患者に見せている。
「インターフェロン単独治療の効果を予測するアルゴリズム(手順)です」と泉部長。
患者の血液検査データから得られた、ウイルスの遺伝子変異数や量、血小板数などを当てはめながら矢印をたどれば、ウイルスが体内から消える確率(治癒率)が分かるという。
例えば、ウイルスの遺伝子型が1bで、変異が2個、54歳で血糖値が120などの男性なら治癒率は43%。
ほかの条件は同じでも血糖値が140以上の患者なら、治癒率はその半分になる。
基にしたのは92年以降に来院した患者の検査データ約130万件で、市販の専用ソフトで解析。
129の検査項目のうち54項目が治癒率と関係があることが分かり、2006年の日本肝臓学会で発表した。
「インターフェロン単独で治癒率80%なら、脳出血などの副作用の恐れがある抗ウイルス薬リバビリンを併用しなくても済む」というように、治療方針の決定にも利用している。
▽採掘し金脈に
データマイニングは、無意味に見えるデータの山を採掘(マイニング)し、金脈にたどり着こうというものだ。
スーパーの販売データを解析し「ビールを買う人は紙おむつも買うことが多い」などの関連が分かった場合、理由が不明でも、紙おむつをビールの近くに置くなど、販売戦略にも応用できる。
金融機関は、顧客データからカードローンを使いそうな人を絞り込みダイレクトメールを送る手掛かりにもしている。
バーコードやクレジットカードなどの利用が広がりデータ収集が楽になったのと、データの蓄積や解析のコンピューター技術が飛躍的に進んだことで可能になった。
C型肝炎の場合、それぞれの検査項目と治癒率の関係を割り出すことは比較的簡単だが「多数の項目を総合的に見て、どれが治癒率に深くかかわるか重み付けをする」(泉部長)のは、データマイニングでなければ容易ではない。
▽低い認知度
仮説を立てずにデータ処理し新知識を見いだすユニークな手法だけに、意外な発見もある。
国立病院機構長崎医療センター(長崎県大村市)の八橋弘・治療研究部長は03年、C型肝炎患者の余命判定を実用化。
「ある腫瘍マーカーとコレステロール値が、余命に深くかかわっていることが判明した」と言う。
泉部長も「血糖値がインターフェロン治療の効果を左右することが、初めて分かった。
患者に血糖値を下げるよう根拠を示して説明できる」と利点を強調する。
コンピューターのサイバー攻撃検知など応用は広がっているものの、データマイニングの認知度は医療ではまだ低い。
八橋部長は「統計解析の専門家からは『面白みはあるが再現性がない』と言われた」と明かす。
だが「遺伝子の塩基配列が一つだけ異なり薬の効き目や病気のかかりやすさを左右する一塩基多型(SNP)を解析するのに有用だろう」と注目。泉部長は「糖尿病や心筋梗塞(こうそく)など重大な合併症の危険因子を探ったり治療効果を予測したりするのにも使えそうだ」と期待している。
<参考記事>
出典 日経新聞・朝刊 2009.7.6
版権 日経新聞社
<関連サイト>
医療分野の発展にも寄与するデータマイニング
~C型肝炎患者の膨大な医療データから新たな知見を得る~
http://www.atmarkit.co.jp/ad/spss/spss0801/musashino.html
データマイニングにより新たな治療方法を発見
武蔵野赤十字病院
http://www.spss.co.jp/success/files/c112.html
米国でネオアジュバント用薬が初めて正式に承認
11 年前
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