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2010年3月16日火曜日

C型肝炎治療剤開発の課題

Behrad Derakhshan博士らは10年2月5日発行のScrip誌(no.3472:29-31頁)で全世界のC型肝炎治療剤の開発動向を展望しています。


WHOの推定によると、現在世界の人口の少なくとも3%(およそ1億8000万人)がC型肝炎(HCV)に感染している。

この大半は東アジアである。患者のおよそ70%が慢性HCVを有する。

このうち一部の患者が、肝細胞癌(HCC)や最終的に肝臓移植を必要となる肝硬変などのより厄介な肝臓続発症を発症する。HCVの有病率は地域によって異なり、診断率は依然としてほぼ等しいのが現状である。HCV感染患者で診断されるのは50%未満である。

医師らはHCVを診断する際に複数の判定基準を慎重に考慮する。

最も重要な要因なのが、HCV遺伝子型とウイルス量である。

HCVには主に6つの遺伝子型がある。遺伝子型1型が最も多く、治療をするのが最も困難である。

しかし、患者プロファイルに関係なく、ペグ化インターフェロンα(PEG-IFN)とribavirin(Riba)の併用療法が全ての慢性HCV患者に対する事実上の標準的ケア(SOC)となっている。

HCV治療の顕著なエンドポイントは、全ての治療コース(一般的に遺伝子型1型患者で48週間、遺伝子型2/3型患者で24週間)が完了した24週間後の検出不能なHCV RNAを定義とする持続的なウイルス反応(SVR)である。現在のSOCでは、遺伝子型1型未治療患者のわずか40~50%と遺伝子型2/3型患者の70~80%しかSVRに成功裏に到達しない。

特定のサブグループでは治療がさらに難しくなる。これらのサブグループには、アフリカ系米国人患者、進行性肝臓疾患を有する患者、肝臓被移植患者、HIV患者、遺伝子型4型患者、SOC非反応患者、併発疾患(非アルコール性脂肪肝疾患など)を患っている患者が含まれる。

さらに、PEF-IFN/Ribaで最も多い有害事象であるインフルエンザ様症状、うつ病、貧血がPEG-IFN/Riba治療の壁となり、最終的に患者のコンプライアンスと再発に影響をもたらす。

従って、治療を開始する決定は、有害事象が多く効果が十分ではない長い治療に耐えることができる患者の意欲に一部依存する。

治癒率、長期治療期間、乏しいQOLを考慮すると、診断された全てのHCV患者の10%未満しかPEG-IFN/Riba療法に耐えていないということは驚きではない。

また、医師または患者が高い治癒率の新規治療薬を期待してSOC療法を見合す「patient warehousing」現象が出ている。

Canaccord Adams社は、米におけるこれらのpatient warehousing患者数は40万から50万人の間あたりだろうと推測する。

研究の最前線を行くのが、HCVの特異的標的抗ウイルス療法(STAT-C)である。
STAT-C分子の中で最も注目を集めているのが、NS3-4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5B RNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤である。

そして、直接作用型抗ウイルス剤の第一世代剤の中で先頭に立つのが、Vertex Pharmaceuticals社のtelaprevirとMerck社の(旧Schering-Plough社の)boceprevirである。


これらの製品は大規模なフェーズ2試験でHCV血清RNA値を大幅に減少させ、遺伝子型1型未治療患者で65~75%のSVRをもたらした。

Telaprevirの場合、遺伝子型1型未治療患者の治療期間を48週間から24週間に減少させたことは医師と患者の両方から歓迎される。

プロテアーゼ阻害剤に続く、さまざまな薬剤が市場シェアを競っている。

Roche社/Pharmasset社のRG7128などの新世代ポリメラーゼ阻害剤は、忍容性があり、SOCとの併用で有意な有効性を示している。


しかし、telaprevirとboceprevirが未治療患者と非反応/再燃患者でのレベルを上げていることから、ポリメラーゼ阻害剤への注目はプロテアーゼ阻害剤の競合品からプロテアーゼ阻害剤の併用剤に焦点が変わった。

Roche社/InterMune社のフェーズ1 INFORM-1試験(RG7128/ITMN-191)に反映されるように、ポリメラーゼ阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の併用戦略はPEG-IFN/Riba代替レジメンとしての可能性があることから有望である。

Vertex社とBMS社は、自社のプロテアーゼとポリメラーゼの併用試験を10年に開始する計画
である。

もう1つの注目されているSTAT-Cは、シクロフィリン阻害剤である。

最も有望なDebiopharm社のDebio 025、Novartis社のNIM811、Scynexis社のSCY-635は、さまざまなフェーズの臨床開発でSOCとプロテアーゼ阻害剤とポリメラーゼ阻害剤の併用剤として有望な結果を示している。

GlobeImmune社のGl-5005、Intercell社のIC41、Transgene社のTG4040などの治療用ワクチンも臨床試験で大きく進んでいる。


有望な安全性プロファイルと独特の作用機構をもって、これらの製品は低分子との併用療法候補でもある。

しかし、telaprevirとboceprevirの強力な臨床プロファイルと先発者としての利益を考慮すると、新しい薬剤に依然として将来性があるのだろうか?という疑問が残る。

著者の見解では、HCVパイプラインの変化を考えると第一世代プロテアーゼ阻害剤はHCV市場を独占しない。反応誘導療法は推進力を得ている。

医師らは既に治療期間を調節することによって特定の患者に合わせたPEG-IFN/Riba療法を行っている。

Telaprevirとboceprevirやその他のプロテアーゼ阻害剤の有害事象が異なるとを考えると、全ての有害事象が薬剤クラスと関連するものではないことが示唆される。
これは、より安全で耐容性のある次世代化合物の扉を開く。Telaprevirの24週間の治療スケジュールに対して同等かより短い治療期間をもたらすことも競争上において魅力的である。

TelaprevirとboceprevirのPROVEとSPRINT試験はそれぞれプロテアーゼ阻害剤が新しいSOCとなる基を作ったが、これらの臨床プロファイルは未だに進化している。

例えば、PROVE試験の成功とtelaprevirのq8h投与レジメンの限界の認識を基に、Vertex社/J&J社はC208試験でBID投与と80%以上のSCR率を示したデータをAmerican Association for the Study of Liver Disease(AASLD)で報告した。

さらに、有望なフェーズ2データにより、telaprevirは非反応患者と再燃患者のような治療が難しい患者に有効である可能性が示された。

SVRは非反応患者で40%と再燃患者で治療48週間後に76%であった。

Merck社もSchering-Plough社の買収で獲得した製品である次世代1日1回投与プロテアーゼ阻害剤narlaprevirを進めている。

同剤は、患者の投薬負担を大きく軽減させることを狙いとする。

これは、よりすぐれた臨床プロファイルに達するための次世代製品の標的の変化を示す。

Telaprevirとboceprevirは現在のSOCよりも優れていることを確立したことから、新世代製品は承認や償還のために実薬対照試験で優位性を示す必要がでてくるだろうか?

これは間違いなく費用と技術的リスクをもたらすだろう。

さらに、新しい薬剤が併用試験に持ち込まれるなら、telaprevir、boceprevir、narlaprevirのどの製品と併用されるべきか?

それともポリメラーゼ阻害剤か?

インターフェロンやribavirin、またはいずれかを含むべきか?

オプションは無限大のようで、しくじったり失敗したりするリスクは現実的である。


新しいHCV製品の商業的魅力は近年におけるこの領域での取引価格で確証されている。

より多くの有力候補が臨床試験に入れば売却先候補の競争は厳しくなる。

HCVは今後3~5年間で最も流動的な市場の1つになる可能性が高い。

企業はどのようにしてこの流動的市場において彼らのHCV薬剤の価値を最良に実現することができるだろう。

慎重な市場分析と創造的な開発計画だけが新しいHCV製品を他の製品と差別化させ、市場リーダーシップへの正しい道を見つけることができる。

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