大日本住友製薬製品企画部の栗原栄子氏は、09年11月のBIO Clinica(24巻13号1212頁)で天然型インターフェロンα(IFN-α)製剤スミフェロンの開発の経緯とC型代償性肝障害に対する臨床結果を概説した。
スミフェロンは80年に住友製薬(現・大日本住友製薬)が英ウェルカム(現・グラクソ・スミスクライン)社より導入し、ヒトリンパ芽球大量培養法により産生された約20種のサブタイプから構成される高純度のIFN-α(HLBI:Human Lymphoblastoid Interferon)を含有する製剤である。
IFNはウイルス感染に際して産生される糖蛋白として発見され、ウイルス感染症に対する生体の防御機構の重要な一部を担うものとして知られていた。
その後、抗ウイルス作用のみならず抗腫瘍作用をはじめ種々の生物学的作用を有することが明らかになり、80年代より癌、ウイルス治療剤として開発が進められた。
スミフェロンは、87年1月に胃癌、多発性骨髄腫の効能・効果が承認された。
C型代償性肝硬変患者に対するHLBI(スミフェロン)の有効性、安全性を検討する目的で、用法用量比較多施設共同試験が行われている。
登録されたC型代償性肝硬変患者は、用法・用量の異なる3群に層化割り付けされ、スミフェロンを投与した。
C型代償性肝硬変患者はC型慢性肝炎患者に比べて、血小板数や白血球数が低値であるうえに、IFN治療による副作用として血小板数減少や白血球数減少が認められることから、減量、休薬、投与中止は、血小板数、白血球数の減少の程度に応じて行われている。
有効性の評価は、「最大の解析対象集団(FAS)」を解析対象として行われ、主要評価項目は、投与終了(中止)24週後のHCV RNA陰性化率、投与終了(中止)時、投与終了(中止)24週後のALT正常化率、投与終了(中止)時、投与終了(中止)24週後のAST正常化率が用いられている。
投与終了(中止)24週後のHCV RNA陰性化率は、3S群22.6%(7/31)、3L群32.1%(9/28)、6S群30.0%(9/30)であったと報告されている。
各群とも20%を上回るHCV RNA陰性化率が得られており、C型代償性肝硬変であっても、スミフェロン投与よりHCVのウイルス排除が可能であることが示されている。
投与終了(中止)時、投与終了(中止)24週後のALT正常化率は、3S群52.2%(12/23)、30.4%(7/23)、3L群45.0%(9/20)、35.0%(7/20)、6S群60.9%(14/23)、43.5%(10/23)であり、AST正常化率は3S群40.0%(10/25)、20.0%(5/25)、3L群42.3%(11/26)、30.8%(8/26)、6S群51.9%(14/27)、40.7%(11/27)であったと報告されている。
また、スミフェロン投与前後のALT値の経時的推移は、スミフェロン投与中、ALT値は改善しており、投与終了(中止)後にリバウンドがみられるが、投与終了(中止)24週後には投与開始前の値よりも改善していたと報告されている。
これらから、C型代償性肝硬変においても、スミフェロン投与により肝機能を改善し得ることが明らかにされている。
スミフェロン投与前後の血小板数の経時的推移は、投与開始後2週以内の連日投与会館に最小値を示し、投与終了(中止)24週後には投与開始前を上回っていたと報告されている。したがって、投与開始後2週以内の連日投与期間では、特に注意深く患者の状態を観察し、定期的な血液検査を行うことが望ましいと考えられる。
安全性に関しては、スミフェロン投与によって89例全例に有害事象が認められ、発現件数は1508件であったが、投与中止となった有害事象は5.6%(5/89)であり、すべて投与中止後に回復もしくは軽快した。また、発現割合が高い有害事象は、発熱、血小板数減少、白血球数減少、倦怠感、好中球数減少、関節痛などであり、C型慢性肝炎患者において発現割合が高い有害事象と同様であったことが報告されている。
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